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【皮膚科医が解説】更年期の肌と向き合う。ゆらぎをやさしく支えるケア習慣

年齢を重ねる中で、肌や心のリズムがふとゆらぐ瞬間が増えてきたと感じることはありませんか。そんな時期こそ、自分の肌や体にそっと耳を傾け、毎日のケアや過ごし方を見直すタイミングです。更年期の肌を整えるために必要なのは、特別なことではなく、「自分をどう扱うか」を少しずつ整えていくこと。今回は、皮膚科医の髙瀬聡子先生に、スキンケアやインナーケア、そして暮らし方まで、今の自分に寄り添うヒントを伺いました。

お話を伺ったのは…

まず見直したいのは「自分自身との向き合い方」

Q.更年期の肌ケア、まず何から見直すべき?

A.更年期の肌ケアの出発点は、実はスキンケアの前に「自分自身との向き合い方」を見直すことです。

更年期は、心と体の変化が同時に起こる時期。それをどう受け止め、どう受け入れていくかを考えることが、とても大切になってきます。

具体的には、自分のイライラや落ち込みに振り回されるのではなく、「私はどんなときに疲れがたまるのか」「どうすると気持ちが回復しやすいのか」「何をするとご機嫌でいられるのか」といった、自分の“取扱説明書”を確認していくイメージです。

がむしゃらに仕事や子育てを優先してきて、自分を顧みる時間がもてなかった人ほど、体が「そろそろ自分を大切にしてほしい」とサインを出しているとも言えます。

更年期の肌ケアは、スキンケアの見直しだけでなく、「どんな生活リズムで、どんなふうに自分を扱うか」を整えることから始まります。自分をご機嫌にする方法を知ることが、結果的に肌にもよい影響を与えてくれます。

内側も外側もやさしく。“自分をいたわる”更年期ケア

Q.更年期のスキンケアはどのように見直すとよい?

A.更年期のスキンケアは、「攻めて鍛える」から「甘やかして守る」ケアへシフトすることがポイントです。

更年期の肌は、「プロゲステロン」の減少による乾燥傾向と、「エストロゲン」の減少によるハリ不足がベースにあります。つまり、「乾いている」「ハリを自分でつくりにくい」という前提の上に成り立っている肌だと考えるとわかりやすいでしょう。

そのため、この時期は「足りないものを与えて補う」スキンケアが中心になります。「ナイアシンアミド」や「コラーゲン」、「ヒアルロン酸」など、ハリやうるおいをサポートする成分を含むアイテムを意識して取り入れることで、自分では十分につくり出しにくくなった部分を外側から支えるイメージです。

一方で、注意したいのが「やりすぎのケア」です。ターンオーバーの低下を気にしてピーリングを増やしてしまう方もいますが、更年期の肌は再生力自体が落ちているため、過度なピーリングは乾燥や肌荒れを進めてしまうことがあります。また、若い頃に効果を感じていた“叱咤激励タイプ”の「レチノール」や攻めの美容医療なども、更年期以降は人によって負担になることがあります。

更年期のスキンケアは、「頑張らせる」より「いたわってあげる」方向へ。美容医療も含めて、何でも試すのではなく、自分の肌質や回復力と相談しながら、スキンケアに少しずつ軌道修正していくことが大切です。

Q.更年期世代にとって、インナーケアはどのように取り入れるとよい?

A.更年期以降は、肌だけでなく体全体の「つくる力」がゆるやかに落ちていく時期です。そのため、インナーケアではまず、体づくりの土台になる「たんぱく質」をしっかり摂りましょう。

加えて、たんぱく質をうまく利用するために、代謝を助ける「ビタミンB群」や「ミネラル類」が欠かせません。また、更年期に限らず、女性が不足しがちな「鉄」も忘れずに。抗酸化の観点からは「ポリフェノール」を含む食品も、年齢を重ねた肌や体をサポートしてくれます。

さらに、髪や爪のためには、亜鉛やビオチン(ビタミンH)なども意識したい栄養素。健康面でいえば、更年期以降は骨密度が低下しやすくなるため、「カルシウム」を積極的に摂ることも大切です。

もちろん、基本は食事からとることが前提ですが、忙しい日々の中で、すべてを完璧に食事だけでまかなうのは現実的ではありません。更年期以降は若い頃以上に、サプリメントや美容ドリンクなどのインナーケアアイテムの力を上手に借りてみましょう。

また、こうしたインナーケアアイテムを「お守り」のように使うのも一つの方法です。サプリメントを毎朝飲むのをルーティンに取り入れたり、寝る前にお気に入りの美容ドリンクをゆっくり味わうといった小さな習慣は、栄養面だけでなく、気持ちを切り替えるスイッチにもなってくれます。栄養素としての役割と、心の支えとしての役割。その両方を持つインナーケアを、自分のペースで取り入れてみてください。

心地よい時間が肌を整える。更年期の暮らし方

Q.更年期世代が意識したい、肌を安定させる1日の過ごし方は?

A.更年期世代にとって、肌を安定させる鍵になるのは、自律神経を整え、心を回復させる時間を意識的にもつことです。

日々の中で、常に何かを考え続けている状態から一度離れ、“今ここ”に集中する時間を少しでももつことで、自律神経は穏やかなバランスを取り戻しやすくなります。

それは、特別なことでなくて構いません。朝、コーヒー豆を挽きながら香りを味わう、カップを両手で包み込む時間に意識を向けてみる。外に出てランニングやウォーキングをしながら、季節ごとの空気や景色を感じてみる。あるいは、週に一度でもピラティスやヨガなどで呼吸と体の動きに集中し、「今、体がどう動いているか」「どこが硬いか、疲れているか」を感じ取る。

大事なのは、「反省会のように自分を責める時間」ではなく、「心地よいと感じられる時間」を選び取ることです。自分にとっての心地よさを生活の中に散りばめていくことが、自律神経の安定を促し、その積み重ねが結果として肌の安定にもつながっていくでしょう。

更年期を、次のステージへ進むための準備期間に

今回は、皮膚科医の髙瀬聡子先生にお話を伺いました。

更年期の肌を整えるということは、単にスキンケアや栄養を足すだけではなく、“これからの自分とどう付き合っていくか”を見つめ直す時間でもあります。

ホルモンの変化によってゆらぎやすくなる肌や心を、無理にコントロールしようとするのではなく、乾きやすい肌にはやさしく与え、疲れた心には心地よい時間をそっと差し込む。

そうした小さな「いたわり」の積み重ねこそが、外側のスキンケアも、内側のインナーケアも、より効果的に働きやすい土台をつくってくれます。

更年期は、これまで頑張ってきた自分をねぎらい、新しいリズムで毎日を整えていくための大切なステージ。肌も心も、ゆっくりと自分にやさしく寄り添いながら、これからの時間を育てていきましょう。

 

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