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【皮膚科医が解説】更年期の肌に起きていること。乾燥・ハリ不足を招く女性ホルモンのゆらぎとは

年齢を重ねるにつれて、「なんとなく肌の調子が違う」「いつものケアが前より効きにくい」と感じる瞬間が増えていませんか。その変化の背景には、実は“女性ホルモンのゆらぎ”が深く関わっています。とくに更年期は、ホルモンや肌、心身のリズムが静かに、しかし大きく変わっていく時期。体の内側でどんな変化が起きているのかを知ることで、不安が少し軽くなり、これからのケアのヒントにもつながります。今回は、皮膚科医の髙瀬聡子先生に、更年期と肌の関係について詳しく伺いました。

お話を伺ったのは…

更年期に起こる女性ホルモンと肌の深い関係

Q.更年期とはどんな時期?女性ホルモンとの関係は?

A.更年期とは、閉経を挟んだ前後の約10年間にあたり、女性の心身が大きな転換期を迎える時期。この時期に起こる変化の中心にあるのが「女性ホルモンのゆらぎ」です。

女性ホルモンには「プロゲステロン」と「エストロゲン」がありますが、更年期に入るとまずプロゲステロンが先に減少し、その後エストロゲンもゆるやかに減少していきます。2つのホルモンが同じリズムで減少するわけではないため、これまで保たれていたバランスが崩れやすくなり、その乱れがさまざまな不調のきっかけになります。

閉経が近づくにつれてエストロゲンの量も大きく減少し、両方のホルモンが少ない状態へと移行します。こうしたホルモンバランスの急激な変化こそが、更年期の特徴と言えます。

 

Q.女性ホルモンは肌にどのような働きをしている?

A.女性ホルモンは、皮脂分泌とうるおい、ハリや弾力を保つために欠かせない働きをしています。

プロゲステロンは皮脂の分泌に深く関わるホルモンです。妊娠中にニキビができやすいのは、プロゲステロン量が増えるためですが、更年期では逆にこれが減っていくので、まず「乾燥しやすくなる」という変化が現れる傾向にあります。

一方、エストロゲンは「真皮」の「線維芽細胞」を働かせる役割をしています。皮膚は1枚に見えて実は層状の構造となっており、真皮は、いちばん外側にある「表皮」の下に位置する“肌の土台”のような層。

その真皮で働く線維芽細胞は「コラーゲン」や「ヒアルロン酸」、「エラスチン」といった、肌のハリや弾力、水分保持を支える成分をつくる細胞です。エストロゲンが減るとこうした成分がつくられにくくなり、肌のうるおいやハリが徐々に失われていきます。

更年期は、プロゲステロンの減少による乾燥、そしてエストロゲンの減少によるハリや弾力の低下が同時に進む時期。だからこそ、「急に肌が変わった気がする」と実感しやすいタイミングでもあるのです。

Q.更年期の肌内部では、どのような変化が起きている?

A.大きな変化が起こるのは、“肌の土台”である真皮です。

エストロゲンの減少によって線維芽細胞の働きが弱くなると、真皮にあるコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンが十分につくられなくなり、内部がスカスカした状態になっていきます。表皮に直接影響するというよりも、その下にある真皮がボリュームを失っていくイメージです。

土台が弱ることで、小じわが目立ちやすくなったり、肌の柔軟性が失われたりするほか、全体的にハリがなく、しぼんだような印象に見えてしまうことも。

また、水分を抱えておく力も弱まるため、乾燥しやすくなることに加え、バリア機能も低下し、少しの刺激でも敏感に反応しやすくなるなどの変化も現れてきます。

“最近なんだか少し違う”。更年期の肌に起きること

Q.「いつものスキンケアが急に効かなくなった」と感じるのは、更年期と関係がある?

A.更年期、つまり女性ホルモンの変化が関係している場合があります。

年齢とともにターンオーバーはゆっくりになるため、そもそも20代の頃と同じようにはいかなくなっていきますが、更年期にはこれに加えて、エストロゲンの減少によって線維芽細胞そのものが活性化しにくくなります。肌の土台が弱くなるので、これまでと同じお手入れを続けていても「効きにくい」と感じやすくなるのです。

これは、使っている化粧品が急に合わなくなったというよりも、肌のつくりが変わり始めたサイン。更年期は、スキンケアを見直したり、肌に合ったアプローチを探るタイミングと捉えていただくと、前向きに過ごせるかもしれません。

 

Q.更年期以降で多い、肌悩みは?

A.まず自覚しやすいのは、ハリや弾力の低下、そして小じわの増加です。

また、「なんとなく肌の元気がなくなった」というような、言葉では表現しにくい違和感を訴える方も多いです。私はその状態を“へたり肌”と呼んでいます。若い頃のように細胞がエネルギーを持ってパーンと張っていた状態から、少しずつ勢いが落ちて、その変化が見た目にも現れてくるような状態です。

こうした“元気のなさ”が見える背景には、くすみも関係しています。水分量が減ると肌の透明度が下がり、小じわが増えることで光の反射が変わります。その結果、肌に影が落ちたように見え、全体のトーンが沈んで見えてしまうのです。

 

Q.一般的な「年齢肌」と「更年期の肌」は何が違うの?

A.年齢肌が「少しずつ積み重なる変化」だとすれば、更年期の肌はその延長線ではなく、一つ段差を超えるような“急な変化”が起こる時期です。

たとえば、コラーゲンは通常は年に1%程度ゆるやかに減っていきますが、閉経後の数年間では、約30%も急激に減少すると言われています。これは、今までとはまったく違うスピードと規模の変化。だからこそ、「最近急に変わった気がする」と自覚するのです。

年齢肌がなだらかな坂道だとすれば、更年期の肌変化はジェットコースターのように、少し急な角度に切り替わる——そんなイメージが近いかもしれません。

更年期の肌を左右する、心身の変化と生活リズム

Q.更年期に起こる心や体のゆらぎは、肌にも影響する?

A.更年期に生じる心や体の変化は、めぐりめぐって肌のゆらぎにつながることがあります。

女性ホルモンが乱れると、自律神経のバランスも崩れやすくなります。イライラしやすくなったり、落ち込みやすくなったり、眠りが浅くなるなどの心身の不調が現れるのはそのためです。

そして、肌の調子が以前と違って見えることで、自信がなくなってしまう方もいるかもしれません。こうした気持ちの変化もさらに、自律神経やホルモンバランスに影響し、肌のゆらぎとして現れることもあります。

ただ、更年期は“マイナスな節目”というわけではありません。むしろ、これから先の自分の体や暮らし方を整え直す、移行期のようなもの。肌も体も、この時期の向き合い方が、これから先の人生を心地よく生きることにつながっていくでしょう。

 

Q.睡眠・食事・運動といった生活習慣は、更年期の肌に関係ある?

A.基本的な生活習慣を整えることは、更年期の肌にとって大切です。

更年期は女性ホルモンだけでなく、代謝に関わる「甲状腺ホルモン」やエストロゲンの材料となる「DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)」、眠りを導く「メラトニン」、心の安定を支える「オキシトシン」など、さまざまなホルモンが全体的に変化していく時期です。

ホルモンは一つずつ働くのではなく、バトンリレーのように連携して作用しているため、生活リズムが乱れると連携がうまくいかなくなり、肌のゆらぎにつながります。

だからこそ、更年期以降は睡眠・食事・運動といったごく基本的な習慣を丁寧に整えることが、肌にも心にも大きな味方となります。特に筋肉量を保つことは代謝を支え、ホルモンの働きを助けるため、“筋肉は宝”とも言われています。

更年期は、これからの自分を支える生活の基盤を整える絶好の機会でもあります。

変化の理由を知ることは、自分をいたわる第一歩

今回は、皮膚科医の髙瀬聡子先生にお話を伺いました。

更年期の肌に現れる変化は、ホルモンや心身のゆらぎ、生活リズムの乱れなど、いくつもの要因が折り重なって生まれます。理由を知っておくことで、「なんとなく不安」「どうして急に?」といった気持ちが少し軽くなるはずです。

肌の変化は、体が新しいステージへ向かうためのプロセス。ゆっくりと、そのリズムに寄り添っていきましょう。

次回は、この変化を踏まえた「具体的なケア」について、日々に取り入れやすい方法をお届けします。

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